被爆64周年(2009年) 平和宣言

  オバマ米大統領(第44代:1961-  )の4月のプラハ演説に(被爆64年もかかって)核廃絶への道にわずかな光がみえたという事をわたしも感じています。しかしオバマ大統領の任期は2009年から4年、そして最大でも2期8年、核兵器廃絶の目標である2020年まで大統領職ではありません。
また、広島に原爆を投下した米軍:エノラ・ゲイ号機長ポール・チベッツ(=ティベッツ:1915-2007)は、原爆投下を「原爆投下によって、多くの命を救った」という主張を死ぬまで取り下げることはありませんでしたし、その主張は広く米国人そして日本の近隣諸国国民が支持している主張ということも忘れてはいけないと(わたしは)思うのです。
平和宣言でいう、核兵器廃絶を実現しなければという考えが世界の多数派とは云えないのではと思うのです。
印度、パキスタンの国民に聞けばほとんどが核兵器保有を支持すると聞きますし、北朝鮮の国民は中国の国民はといえば切りがありませんが、核兵器廃絶の実現が皆無でないことを信じてわたしにできることはと考えながら、残る人生を歩んでいきたいとは思っています。
『Yes, we can』という言葉で今(2009)年平和宣言は結んでいますので、この頁は「わたしにできることはほとんどないでしょうが、僅かでもと」という言葉で結ぶことにしました。
オバマプラハ演説の断片しか知りませんでしたが、今年の平和宣言の中心に置いてもいますので、全文(日本語・仮訳)を読んでみました。
わたしは、核兵器の廃絶を願っている単なる広島市民ですので、平和宣言で云う「オバマジョリティー」ではありません。
しかし、プラハ演説に核廃絶への一歩を核大国・米国が踏み出そうとしていると思うし、ヒロシマナガサキ議定書※には賛同の意をもっています。
09.08.17追記   09.08.07裕・記編集

09.08.06.裕撮影
平和宣言中の秋葉忠利広島市長
人類絶滅兵器・原子爆弾が広島市民の上に投下されてから64年、どんな言葉を使っても言い尽せない被爆者の苦しみは今でも続いています。64年前の放射線がいまだに身体をむしばみ、64年前の記憶が昨日のことのようによみがえり続けるからです。

幸いなことに、被爆体験の重みは法的にも支えられています。原爆の人体への影響がいまだに解明されていない事実を謙虚に受け止めた勇気ある司法判断がその好例です。日本国政府は、「黒い雨降雨地域」や海外の被爆者も含め高齢化した被爆者の実態に即した援護策を充実すると共に、今こそ省庁の壁を取り払い、「こんな思いをほかだれにもさせてはならぬ」という被爆者たちの悲願を実現するため、2020年までの核兵器廃絶運動の旗手として世界をリードすべきです。

今年4月には米国のオバマ大統領がプラハで、「核兵器を使った唯一の国として」、「核兵器のない世界」実現のために努力する「道義的責任」があることを明言しました。核兵器の廃絶は、被爆者のみならず世界の大多数の市民並びに国々の声であり、その声にオバマ大統領が耳を傾けたことは、「廃絶されることにしか意味のない核兵器」の位置付けを確固たるものにしました。

それにこたえて私たちには、オバマ大統領を支持し、核兵器廃絶のために活動する責任があります。この点を強調するため、世界の多数派である私たち自身を「オバマジョリティー」と呼び、力を合せて2020年までに核兵器の廃絶を実現しようと世界に呼び掛けます。その思いは、世界的評価が益々ますます高まる日本国憲法に凝縮されています。

全世界からの加盟都市が3,000を超えた平和市長会議では、「2020ビジョン」を具体化した「ヒロシマ・ナガサキ議定書」を、来年のNPT再検討会議で採択してもらうため全力疾走しています。採択後の筋書は、核実験を強行した北朝鮮等、すべての国における核兵器取得・配備の即時停止、核保有国・疑惑国等の首脳の被爆地訪問、国連軍縮特別総会の早期開催、2015年までの核兵器禁止条約締結を目指す交渉開始、そして、2020年までのすべての核兵器廃絶を想定しています。明日から長崎市で開かれる平和市長会議の総会で、さらに詳細な計画を策定します。

2020年が大切なのは、一人でも多くの被爆者と共に核兵器の廃絶される日を迎えたいからですし、また私たちの世代が核兵器を廃絶しなければ、次の世代への最低限の責任さえ果したことにはならないからです。

核兵器廃絶を視野に入れ積極的な活動を始めたグローバル・ゼロや核不拡散・核軍縮に関する国際委員会等、世界的影響力を持つ人々にも、2020年を目指す輪に加わって頂きたいと願っています。
対人地雷の禁止、グラミン銀行による貧困からの解放、温暖化の防止等、大多数の世界市民の意思を尊重し市民の力で問題を解決する地球規模の民主主義が今、正に発芽しつつあります。その芽を伸ばし、さらに大きな問題を解決するためには、国連の中にこれら市民の声が直接届く仕組みをつくる必要があります。例えば、これまで戦争等の大きな悲劇を体験してきた都市100、そして、人口の多い都市100、計200都市からなる国連の下院を創設し、現在の国連総会を上院とすることも一案です。
被爆64周年の平和記念式典に当り、私たちは原爆犠牲者の御霊みたまに心から哀悼の誠をささげ、長崎市と共に、また世界の多数派の市民そして国々と共に、核兵器のない世界実現のため渾身こんしんの力を振り絞ることをここに誓います。
最後に、英語で世界に呼び掛けます。
 
We have the power. We have the responsibility. And we are the Obamajority.
Together, we can abolish nuclear weapons. Yes, we can.
2009(平成21)年8月6日 広島市長  秋葉 忠利  
(注) 英語部分の訳は次のとおりです。
私たちには力があります。私たちには責任があります。そして、私たちはオバマジョリティーです。
力を合せれば核兵器は廃絶できます。絶対にできます。
◇上記宣言文は、「広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式」会場で配られている式次第の中にある「平和宣言(日本語)」を転記しました
(参考資料:ヒロシマナガサキ議定書)
  ヒロシマナガサキ議定書は、平和市長会議が発表したもので、
(1)新たな核兵器の取得と使用につながる行為の即時停止。
(2)廃絶の国際的枠組み合意に向け、保有国に誠実な交渉開始を要求。
(3)2015年までに取得や使用につながる行為の禁止を法制化する。
(4)2020年廃絶の作業プログラム策定。各作業を段階的に進めようという内容となっています。
ヒロシマ・ナガサキ議定書
-2020 年までの核兵器廃絶の実現に向けた核不拡散条約(NPT)の補足-
核不拡散条約(NPT)締約国の同条約第6条に基づく核軍縮交渉義務の履行を促進するとともに、核兵器の使用と威嚇の違法性を示した1996(平成8)年の国際司法裁判所の勧告的意見に基づく全ての国の核軍縮義務の履行を促進するため、全ての局面で核軍縮に取り組む包括的な方策の確立を希求し、核兵器国が核兵器の取得禁止規定から免除されているという核不拡散条約の差別的性質を継続して認めることは、全ての局面で核軍縮を誠実に追求することと相容れないということを考慮し、1995(平成5)年の核不拡散条約再検討会議の「核不拡散と核軍縮のための原則と目標に関する決定」のとおり、全ての核兵器を廃絶することで国際法下の真の平等の回復を図らねばならない点を鑑み、
第1 条 本議定書を締約する核兵器国は、以下の行為を直ちに停止する。
(1) 核不拡散条約の下で非核兵器国が禁止されている核兵器取得に繋がる活動全般
(2) 核兵器を自国の軍事政策及びその実践に組み入れる活動全般
当該国は合わせて、全ての核兵器及び兵器に利用可能な核分裂性物質を出来るだけ早期に安全な保管場所に厳重に保管するものとする。
2 本議定書のその他全ての締約国のうち、兵器に利用可能な核分裂性物質を保有する国は、その状況により、本条第1項が核兵器国に対して定めるのと同様の措置をとる。
第2 条 本議定書の締約国は、全ての局面での核軍縮に向け、以下の主要な二つの分野について誠実な交渉を行う。
第一分野 本議定書第1条第1項及び第2項による措置を標準化し法制化すること。
第二分野 以下の事項に取り組むこと。
(1) 全ての核兵器の廃絶及び搬送車両、発射台、指令管理システム等の関連配備システムの廃止
(2) 生産・試験施設を含む核兵器システムの取得に関わる全ての基盤施設の廃止及び兵器に利用可能な核分裂性物質の全ての在庫の廃棄
2 本条第1項による交渉は、核兵器協定または同様の枠組み合意の設置を目的とする。全ての締約国は、直ちに交渉を開始し、当該目的を達成するまで間断なく交渉を継続しなければならない。なお、交渉終了までの間、当該交渉のための事務局を設置するものとする。
3 本条第1項に規定する第一分野に関する措置については2015年までに、また第二分野に関する措置については2020年までにそれぞれ合意と実施がなされるよう、あらゆる誠実な努力を行うものとする。
4 核兵器協定又は枠組み合意が定める、若しくは見込む措置全般は、厳格かつ有効な国際的統制を受けるものとし、また核兵器廃絶が達成された場合にこれを確実に永続できる国際的な機関の設立に備えるものとする。
第3 条 本議定書のいかなる規定も、本議定書第2条第4項に規定する国際的機関の設立と運営に向けた協力義務を含む核不拡散条約締約国の核不拡散に向けた義務を軽減するものではない。



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